コラム連載 第8回(前編)「過去 ― ブランドは、いつ生まれたのか」

山本さんの会社は、地方で30年続く小さな会社です。
製品は決して派手ではありませんが、品質には自信がありました。
父の代からの方針は、とてもシンプルなものでした。

「無理なことは言わない。 できることは、最後までやる。」

値引きで勝負もしない。
大きなことも言わない。
頼まれた仕事を、きちんとやる。
それが、この会社の“当たり前”でした。

ある日、山本さんは取引先からこんな言葉をかけられます。

「御社は安心ですよね。何かあっても、逃げない。」

山本さんは少し驚きました。
特別なことをしてきたつもりはなかったからです。
でも振り返ると、思い当たる場面がいくつもありました。

  • 納期が厳しいときも、正直に状況を伝えたこと
  • 赤字になっても、約束した仕事を最後までやり切ったこと
  • クレームのとき、言い訳をしなかったこと

それらはすべて、戦略ではなく、その場その場の判断でした。
山本さんの会社は、「誠実な会社になろう」と掲げていたわけではありません。
けれど周囲は、いつの間にかこう理解するようになっていました。

  • あそこは安さの会社ではない
  • あそこは安心の会社だ
  • 最後に頼る会社だ

繰り返されてきた判断が、価値として受け取られ、それが“約束”として信頼されるようになっていたのです。
ブランドは、掲げた瞬間に生まれるものではありません。
過去の選択に、後から名前がついたものなのです。

ここで、少し立ち止まってみてください。
・なぜ、今のお客様はあなたを選んでいるのでしょうか
・なぜ、「あなただから」と言われるのでしょうか
・逆に、選ばれなくなった理由は何だったでしょうか

それらはきっと、過去のどこかの判断とつながっています。

👉 後編では、この「過去の判断」が誰に、どのような価値として受け取られてきたのかを、もう少し丁寧にひも解いていきます。

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